システム要件

ArcGIS Enterprise on Kubernetes 11.2 を実行するために必要な最低限のハードウェアおよびインフラストラクチャについて以下に説明します。 これらの要件は、インターネット非接続環境にデプロイする場合にも適用されます。

サポート環境

システム要件および仕様は、注意書きがない限りサポートされているすべての環境に適用されます。 このリリースでは、次の環境がサポートされています。

Kubernetes クラスターでは、自動アップグレードを無効にすることをお勧めします。 自動アップグレードが有効になっている場合は、ノードが最新バージョンの Kubernetes に自動的に更新されますが、これらの将来のバージョンは ArcGIS Enterprise でまだサポートされていない可能性があります。

注意:
環境をアップグレードする際、Kubernetes をサポートされているバージョンにアップグレードする前に ArcGIS Enterprise on Kubernetes をアップグレードする必要があります。

各環境の次のバージョンはテスト済みで、サポートされています。

サポートされている環境サポートされている Kubernetes バージョン

クラウド上のマネージド Kubernetes サービス (AKS、EKS、GKE)

Red Hat OpenShift Container Platform

(ROSA と ARO を含む) [4.12 ~ 4.14]

RKE および RKE2

1.25 ~ 1.28

注意:

ArcGIS Enterprise on Kubernetes は、x86_64 アーキテクチャ (64 ビット) に準拠した CPU のみでサポートされています。 ワーカー ノードは Linux ベースである必要があります。

コンテナー レジストリ

ArcGIS Enterprise on Kubernetes のコンテナー イメージには、プライベートの Docker Hub 組織からアクセスできます。 Esri は、ArcGIS Enterprise on Kubernetes をデプロイしているユーザーにこの組織のリポジトリへのアクセス権を提供します。 非接続環境にデプロイする場合は、プライベートの Docker Hub 組織から、自分のクラスターからアクセスできる独自のプライベート コンテナー レジストリへイメージをプッシュする必要があります。

Esri ライセンスの取得

デプロイ時に ArcGIS Enterprise 組織を認証するには、JSON 形式 (.json ファイル) の ArcGIS Enterprise on Kubernetes ライセンス ファイルが必要です。 このライセンス ファイルを取得するには、ライセンス アクションを実行する権限を使用して My Esri にアクセスします。

ワーカー ノード

ArcGIS Enterprise on Kubernetes は、3 つのアーキテクチャ プロファイルのいずれかを使用してデプロイされます。 リソース (CPUメモリ) の要求と制限および全体的な計算要件の推奨事項は、選択したプロファイルによって異なります。 各プロファイルの推奨事項を以下に示します。

各アーキテクチャ プロファイルの最小ノード要件は以下のとおりです。 各ワーカー/エージェント ノードには、8 CPU および 32 GiB のメモリ以上を推奨します。 ArcGIS Enterprise on Kubernetes に関連付けられたコンテナー イメージのダウンロードを補正するために、100 GiB 以上のルート ディスク サイズも推奨します。

プレミアム機能を使用して組織にライセンス付与している場合、追加された機能をサポートするには、アーキテクチャ プロファイルごとにその他のワーカー ノードを追加する必要があります。

アーキテクチャ プロファイル最小ワーカー/エージェント ノード最小 CPU の合計最小 GiB の合計

Enhanced availability

5

40

160

Standard availability

4

32

128

開発

3

24

96

ArcGIS Enterprise on Kubernetes デプロイメント内のポッドは、クラスター内のワーカー ノード全体に分散しています。 ワーカー ノードのクロックを共通のソースと同期させ、クラスター内で時間の一貫性を保つ必要があります。 デプロイメントをスケーリングする場合や、別の ArcGIS Enterprise デプロイメントをクラスターに追加する場合は、ハードウェアを適切にプロビジョニングする必要があります。 これには、ノードあたりの最大ポッド数のデフォルト値を増やす必要がある場合があります。 最初に作成されるポッドの数は、アーキテクチャ プロファイルによって異なります。 水平方向にスケールするか、機能を追加すると、ポッド数が増加します。

セキュリティ

以下に、ArcGIS Enterprise on Kubernetes のセキュリティ要件を説明します。

ロールベースのアクセス制御

Kubernetes クラスターでロールベースのアクセス制御 (RBAC) が有効になっている必要があります。 ArcGIS Enterprise on Kubernetes のデプロイでは、cluster-admin 権限は必要ありません。 cluster-admin 権限がない場合、ユーザーは最小の名前空間管理権限を持っている必要があります。 名前空間に RoleBinding を作成することで、ユーザーにデフォルトの ClusterRole を割り当てることができます。 詳細については、RBAC ロールのリソースをご参照ください。

データ フォルダーの登録

ファイルベースのデータ (ファイル ジオデータベースから公開されたアイテムなど) を使用してアイテムを公開するには、データを NFS で共有された位置に配置する必要があります。 データの公開中にデータがサーバーにコピーされないよう、この NFS 共有を ArcGIS Enterprise 組織に登録する必要があります。 共有フォルダーを正常に登録するには、他のユーザーにファイル レベルの読み取り権限を付与する必要があります。 ポッドの IP 範囲へのネットワーク アクセスを許可することで、ネットワークまたはインフラストラクチャ レベルで NFS 共有を保護できます。

ネットワーク

ネットワーク要件には、FQDN とロード バランサーが含まれます。 それぞれの詳細を以下に示します。

完全修飾ドメイン名

ArcGIS Enterprise on Kubernetes は FQDN (たとえば map.company.com) が必要です。 完全修飾ドメイン名は、既存のドメイン名システム (DNS)、または Amazon Route 53 などのクラウド DNS サービスを使用して作成することができます。 デプロイ後、DNS レコードを作成できますが、その値はデプロイしている間に指定する必要があります。 このリリースでは、デプロイ後に FQDN を変更することはできません。

ロード バランサー

各ワーカー ノードでトラフィックを転送するには、ロード バランサーが必要です。 デプロイメント スクリプトから次のロード バランサーをプロビジョニングできます。手動による構成は不要です。

  • Azure Load Balancer (パブリック向けまたは内部向け) - プロビジョニングされる静的なパブリック IP アドレスおよび DNS ラベルは、デプロイメントスクリプトで指定できます。
  • AWS Network Load Balancer (インターネット向けまたは内部向け) - その他のロード バランシング サービスを使用できます。ただし、クラスター ノードごとに手動で構成する必要があります。
    注意:

    パブリックまたはプライベート サブネットにネットワーク ロード バランサーを作成するには、AWS Load Balancer Controller アドオンが必要です。

  • Google Cloud Platform TCP Load Balancer (インターネット向けまたは内部向け) - プロビジョニングされる静的なパブリック IP アドレスは、デプロイメント スクリプトで指定できます。

Web アプリケーション ファイアウォールなどのレイヤー 7 の負荷分散機能を実装する、または既存の Ingress コントローラーを使用する配置されたアプリケーションへの Ingress に関する他の組織の要件を満たすには、クラスターレベルの Ingress コントローラーと統合するためのデプロイメント手順を実行します。

セルフマネージド ロード バランサーまたは NGINX などのリバース プロキシを使用している場合は、次の接続を指定します。proxy_set_header X-Forwarded-Host $host; このヘッダーは、トラフィックが ArcGIS Enterprise 組織の URL に適切にルーティングされるようにするために必要です。

注意:

ArcGIS Enterprise は、リバース プロキシ/ロード バランサーを通じた SSL オフロードをサポートしていません。 リバース プロキシが構成で使用されている場合、HTTPS を通じて ArcGIS Web Adaptor にリダイレクトするか、組織に直接リダイレクトする必要があります。

IP 要件

正常なデプロイメント、適切なスケーリング要件、アップグレード機能を確保するためには、クラスター ネットワークを事前に計画することが必要です。 ArcGIS Enterprise on Kubernetes が最初にデプロイするポッドの数は、アーキテクチャ プロファイルに応じて 47 ~ 66 個です。 機能の追加、デプロイメントのスケーリング、アップグレード処理に伴い、ポッドの数が増加します。

各ポッドには一意の IP アドレスが割り当てられます。また、クラスター ネットワークの構成に応じて、ポッドは、ホスト ネットワーク (オーバーレイ ネットワーク) とは論理的に異なるアドレス空間から、またはホスト サブネットから IP アドレスを取得できます。 たとえば、Azure で Kubernet を使用するようクラスターを構成した場合 (デフォルト)、ポッドは論理的に異なるアドレス空間から IP アドレスを取得し、NAT を使用して Azure リソースにアクセスできるようになります。

Kubernetes は CNI (Container Network Interface) と、プラットフォーム固有の CNI プラグインをクラスター ネットワークで使用するプラットフォーム (AKS や EKS など) をサポートしています。 たとえば、EKS クラスターはデフォルトで VPC (Virtual Private Cloud) CNI を使用します。 クラスターに CNI プラグインが構成されている場合、ポッドは、ホスト サブネットと、VPC/VNet で利用可能な対応 IP プールから IP アドレスを取得します。

ホスト サブネットで使用できる IP の数が十分ではない場合、デプロイメントは失敗するか、デプロイメントをスケーリングできません。 たとえば、EKS クラスターにそれぞれ 2 個のサブネットと /26 IPv4 アドレス接頭辞 (それぞれ 64 個の IPv4 アドレスを使用可能) が構成されている場合、ポッドで使用できる IP アドレス数は 126 個を超えることはできません。 このクラスターに ArcGIS Enterprise on Kubernetes をデプロイできますが、80 個のフィーチャ サービス ポッドを持つようこのデプロイメントをスケーリングすることはできません。このスケーリング要件では、利用可能な IP アドレスの数を超過してしまいます。

システム ストレージ

ArcGIS Enterprise on Kubernetes では、システム ストレージとして永続ボリューム (PV) が必要です。PV は、ストレージ クラスによって動的にプロビジョニングすることも、組織を作成する前に管理者が静的にプロビジョニングすることもできます。 静的プロビジョニング動的プロビジョニングの詳細

ArcGIS Enterprise のステートフル ワークロードには、リレーショナル データベース管理システムと NoSQL データベースが含まれます。 EBS ボリューム (EKS の使用時)、Azure ディスク (AKS の使用時)、Persistent Disk (GKE の使用時)、vSphereVolume または Longhorn ボリューム (セルフマネージド クラスターへのデプロイメント時) など、低遅延のブロック ストレージ デバイスで PV をプロビジョニングすることをお勧めします。

これらの PV は組織のデータと設定を格納するため、制限付きセキュリティ ポリシーを使用して保護する必要があります。 NFS、Azure ファイル、GlusterFS など、ネットワーク ファイル ストレージに基づく PV の場合、不正なアクセスを防ぐように権限が設定されていることを確認します。 EBS、Azure ディスク、vSphereVolume、Longhorn ボリュームなどのブロック ストレージの場合、ストレージ ボリュームへのアクセスが、そのアクセスを必要とするユーザーのみに制限されていることを確認します。

ストレージ ボリュームの説明と使用目的は次のとおりです。

注意:

11.2 の永続ボリューム要件が記載されており、前のバージョンとは異なる可能性があります。

  • インメモリ - 一時システム リソースを格納します。
  • アイテム パッケージ - 公開ワークフローをサポートするサイズの大きいアップロードとパッケージを格納します。
  • オブジェクト - アップロードおよび保存されたコンテンツ、ホスト タイル、画像、シーン レイヤーのキャッシュ、およびジオプロセシングの出力を格納します。
  • キュー - 非同期ジオプロセシング ジョブを格納します。
  • リレーショナル - ホスト フィーチャ データと、カスタマイズや構成設定などの管理面の情報を格納します。 デプロイメント用に 2 つ必要です。
  • 時空間およびインデックス - ログとインデックスのほか、ホストフィーチャ データを格納します。
    注意:

    このリリースでは、時空間ホスト フィーチャ レイヤーはサポートされていません。

  • Usage metric data - GIS サービス使用状況データを格納します。

組織に合ったストレージ要件を検討し、各 PV のサイズを状況に応じて適切に定義してください。

クライアント ワークステーション

デプロイメント スクリプトは、リモートのクライアント ワークステーションから実行できる Bash スクリプトです。 スクリプトを実行しているユーザーには、スクリプトによってサブディレクトリに一時リソース ファイルを書き込めるように、読み取りおよび書き込みアクセス権が必要です。

注意:

互換性に関する既知の問題のため、ArcGIS Enterprise on Kubernetes のデプロイでは、Linux エミュレーターはサポートされていません。

クライアント ワークステーションの設定時に以下が必要です (ダウンロード用リンクを記載しています)。

  • Kubectl
  • 環境固有のコマンド ライン インターフェイス (CLI)

Kubectl は、デプロイメントスクリプトの実行前に必ず必要です。 Kubectl のインストールとセットアップを使用して Kubernetes コマンド ライン ツールをダウンロードします。

注意:

kubectl クライアント バージョンは、Kubernetes サーバー バージョンの 1 つのマイナー リリースに含まれる必要があります。 たとえば、kubectl 1.24 は Kubernetes クラスター バージョン 1.23-1.25 と互換性があります。

デプロイメントを管理する場合は、環境固有のコマンド ライン ツールを使用できます。 次のリンクを使用して、環境固有の CLI をダウンロードしてください。

TLS 証明書

ArcGIS Enterprise on Kubernetes は、NGINX ベースの ingress コントローラーを使用します。 この ingress コントローラーは、スコープされた名前空間であり、ArcGIS Enterprise の名前空間への ingress トラフィックのみを待機するようにデプロイされます。 TLS 証明書は、証明書の共通名と Subject Alternative Names (サブジェクトの代替名) に FQDN が含まれている必要があります。 CA 署名証明書または自己署名証明書を使用できますが、セキュリティ上の理由から、CA 署名証明書をお勧めします。 これは、ingress コントローラーのデフォルトの TLS 証明書です。 デプロイメントスクリプトでは、次の証明書オプションを使用して ingress トラフィックに TLS 証明書を適用できます。

  • プライベート キーと証明書を含む既存の TLS シークレット
  • プライベート キーと証明書を含む .pfx ファイル
  • PEM 形式のプライベート キーと証明書
  • 自己署名証明書

ArcGIS Enterprise on Kubernetes では、ingress コントローラーに対し、Kubernetes cert-manager によって発行および管理された TLS 証明書を使用できます。 この証明書は、ArcGIS Enterprise と同じ名前空間の TLS シークレットに格納する必要があります。 TLS シークレットは、デプロイしている間または ArcGIS Enterprise 組織の作成後に参照される可能性があります。

ArcGIS Pro

  • ArcGIS Pro 3.2 は ArcGIS Enterprise on Kubernetes 11.2 のコンパニオン リリースです。 利用可能な最新機能を入手するには、ArcGIS Pro 3.2 をご使用ください。
  • ArcGIS Enterprise on Kubernetes にサービスを公開するには、ArcGIS Pro 2.8 以降が必要です。
  • ArcGIS Enterprise on Kubernetes のサービスを使用するには、ArcGIS Pro 2.7 以降が必要です。

エンタープライズ ジオデータベースからデータ ストア アイテムを登録する場合、ジオデータベースのバージョンは 10.9.0.2.8 以降でなければなりません。

注意:
利用可能な最新機能を入手するには、ジオデータベースのバージョンを 11.2.0.3.2 にアップグレードしてください。

ジオデータベースのバージョン番号は ArcGIS EnterpriseArcGIS Pro のリリース番号の組み合わせになります。 詳細については、「クライアントとジオデータベースの互換性」をご参照ください。