一時的ボリュームの構成

一時的ボリュームは、処理用の一時領域にデータを読み込む必要があるワークフロー (ラスター解析など) に最適です。 管理者は、指定したサービス デプロイメントのポッドに対してオンデマンドで複数の一時的ボリュームを生成する永続ボリューム テンプレートを作成できます。 その後、そのデプロイメント内の各ポッドは独自の一時的ボリュームを使用でき、取得する独自のリソースを各ポッドに提供します。 ポッドが削除され、一時的ボリュームが不要になると、そのボリュームも削除されます。

ラスター解析用の一時的ボリューム

一部のラスター解析ツールは、複数のワーカー ポッドに計算を分散し、解析の実行中に一時データを書き込みます。 大量のデータを処理する場合、処理する際に一時データを格納するディスク容量を増やすよう一時的ボリュームを構成することをお勧めします。

一時データを格納するために必要なディスク容量はラスター解析機能によって異なりますが、どのラスター解析機能でも、処理するラスター内のセルの数に比例し、構成されているワーカー ポッドの数で均等に分散されます。 解析の複雑さと入力の大きさによっては、必要な空きディスク容量が大きくなる場合があります。

クラスター構成で、指定した解析ツールに関連付けられている一時ファイルを格納するために必要なディスク容量が割り当てられている必要があります。 一時データは、各ツールにより内部で管理され、処理が終了すると削除されます。 提供する一時的な格納コンフィグレーションは、ラスター処理サービス デプロイメントに適用される永続的なボリューム テンプレートとして使用されます。

ラスター解析のストレージ ガイドライン

分散ラスター解析をサポートするために、特に大規模な解析を実行する場合は、一時的ボリュームを構成することをお勧めします。 割り当てるストレージの大きさを確認する際は、必要なディスク容量は処理するラスター内のセルの数および構成されているワーカー ポッドの数によって異なります。

たとえば、サーフェスの平滑化 (Fill) ツールを使用する場合、セル数が 25 億 (50,000 行および 50,000 列) のラスターを処理するには、30 GB のディスク容量が必要になります。 または、サーフェスの平滑化 (Fill) ツールを使用する場合、セル数が 10 億 (約 30,000 行および 30,000 列) のラスターを処理するには、12 GB のディスク容量が必要になります。 どちらの場合でも、必要な合計ディスク容量は、構成されているポッドの数で均等に分散されます。 [RasterProcessing] サービスに 10 個のポッドを割り当てている場合、各ポッドは 25 億のセルの処理に 3 GB、10 億のセルの処理に 1.2 GB を必要とします。 このシナリオでは、[RasterProcessing] サービスには、一時的なストレージを 3 GB または 1.2 GB のディスク容量に設定する必要があります。 スピン アップする各ポッドには、この量の一時的なディスク容量が割り当てられます。 自動スケーリングを使用している場合、この計算の基礎としてポッドの最大数を使用する必要があります。

異なるタイプのツールで 25 億のセルのラスターを処理するために必要な合計ディスク容量は、次のとおりです。

  • 水文解析の場合、17 ~ 35 GB
  • 距離解析の場合、20 ~ 80 GB
  • ジェネラライズ解析の場合、30 ~ 33 GB

一部の使用例では、解析の複雑さおよび指定された追加の入力と出力に基づいて、より多くのディスク容量が必要になる場合があります。 そのような場合、25 億のセルのラスターを処理するために、水文解析ワークフローで最大 90 GB のディスク容量、距離解析ワークフローで最大 170 GB のディスク容量が使用されることがあります。

一時的ボリュームを構成するための組織の要件を決定する際は、次の推奨事項を検討してください。

  • まず、ワークフローのサポートに必要なポッド数を決定します。 たとえば、10 個のポッドを使用して [RasterProcessing] サービスを構成する場合、これらのポッドに必要な合計容量を分散します。 サービスが自動スケーリングで有効化されている場合、この計算の基礎としてポッドの最大数を使用します。
  • 次に、ラスター データセットのサイズ (行と列の数) に基づき、処理に必要となる適切なディスク容量を決定します。
  • 合計ディスク容量の概算値を、[RasterProcessing] サービスに割り当てられているポッドの数で除算します。 この数は、一時的ボリュームを構成するのに必要なストレージの量に適した一般的な推定です。 一時的ボリュームを [RasterProcessing] サービスにアタッチすると、スピン アップ時に各ポッドはこのストレージを動的にリクエストします。 たとえば、合計ディスク容量の要件が 30 GB で、[RasterProcessing] サービス デプロイメントで 10 個のポッドが実行されている場合、各一時的ボリュームに 3 GB のディスク容量を構成します。

ラスター解析用の一時的ボリュームの構成

ラスター解析をサポートする一時的ボリュームを構成するには、次の手順を実行します。 ArcGIS Enterprise Administrator API Directory を使用して永続的なボリューム テンプレートを作成し、[RasterProcessing] サービス デプロイメントに適用します。

  1. ArcGIS Enterprise Administrator API Directory に管理者としてサイン インします。
  2. [System] > [Volumes] > [Configurations] の順にクリックします。
  3. [Create Volume Configuration] をクリックします。
  4. ボリューム構成 JSON に、一時的ボリュームの仕様を含めます。 必要に応じて、この仕様について IT 管理者にお問い合わせください。

    {
      "name": "<user-provided-name>",
      "type": "PVC_TEMPLATE",
      "spec": {
        "storageClassName": "<user-provided-storageclass-name>",
        "resources": {"requests": {"storage": "<user-provided-size, i.e. 3Gi>"}},
        "accessModes": ["ReadWriteOnce"],
        "volumeMode": "Filesystem",
        "volumeName": "<user-provided-optional-volume-name>"
              }
    }
    

  5. ボリューム構成を作成したら、関連する [VolumeID] 値を見つけます。
  6. ArcGIS Enterprise Administrator API ルートで [Services] > [System] > [RasterProcessing (DPServer)] > [Scaling] の順にクリックします。
  7. [RasterProcessing (DPServer)] サービス スケーリング JSON から deploymentId をコピーします。
  8. ArcGIS Enterprise Administrator API のルートで、[System] > [Deployments] の順にクリックして、上記で参照した deploymentId を検索します。
  9. [RasterProcessing (DPServer)] サービスの deploymentId をクリックします。
  10. [Edit Deployment] をクリックします。
  11. JSON で、replicas プロパティを見つけます。
  12. replicas プロパティの後に、ボリューム構成の作成時にコピーした [VolumeID] 値などのボリュームの仕様を追加します。
     
    "volumes": [{
      "purpose": "GIS_SERVICE_TEMP",
      "volumeConfigId": "<volumeId>"
    }],
    
  13. [Submit] をクリックします。

    サービス デプロイメントが再起動されるまで数分かかります。

  14. 必要に応じ、[Run asynchronously] オプションを有効にします。
  15. クラスター管理者とともに各ポッドに作成された新しい永続ボリューム クレーム (PVC) を確認し、一時的ボリュームが正常に構成されたことを確認します。

    これらの PVC は、クラスターに登録されたボリューム構成に従い、動的に作成される PV にバインドします。

一時的ボリュームを使用してラスター解析ワークフローの一時データを格納します。